
© Masaki Ogawa
伝統的手法「墨はじき」の技術
墨はじき技法とは、墨を用いて白抜きの線文様を施す伝統技法です。伊万里鍋島焼の染付においての地文様などに、この墨はじき技法が見られます。文様としては青海波文や紗綾形文が多く使用されており、他には麻の葉文や蜘蛛の巣文などがあります。
技法の手順として、最初に表現する白抜きの文様を素焼の素地に膠入りの墨で描きます。次に、全体を絵具(
墨はじきという名称は、この工程で墨が絵具を弾くことに由来すると考えられています。次に約800度の温度で焼成することによって墨が焼け抜けて白い文様が現れることになります。この後は、通常どおりに透明釉薬を掛け、約1300度の高温度で焼くことで白抜きの文様のある染付が出来上がります。1650年代頃から見られる墨はじき技法は、鍋島焼の歴史の中で洗練され続けてきており高度な伝統技術として今も脈々と受け継がれてきています。
作業工程
1墨はじき

ダイヤルとしての品質(強度)を確保するため、佐賀県窯業技術センターが開発した世界最強クラスの強化磁器素材(特許申請中)※を使用して鋳込むことで円盤状のベースを作り、素焼きします。
今回のデザインテーマである「水暖簾」のように広がった滝の流れを表現するため、鍋島焼の伝統的手法「墨はじき」を用いて、ダイヤルの生地にグラデーションのかかった精緻なストライプ模様を描きだします。
※出展元:佐賀県窯業技術センター
2研削とレーザーカット

文字板サイズの薄さに削ります。その後、レーザーカットを使い文字板の中心穴および外形サイズにカットします。
100分の1mm単位の精度を求められます。
3上絵付と焼成

透明な釉薬を重ね焼成を施した後、11か所の略字を手作業で立体的に描きます。さらに滝の水煙を表現する、金、プラチナ、パールホワイト、光彩※の4色を順に上絵付し、それぞれの色に合った温度で焼きつけます。そのため、ダイヤルが完成するまでには10 回以上の焼成を繰り返します。展覧会の作品でもなかなか行われない、たいへん手の込んだ工程となっています。
※佐賀県窯業技術センターにて開発された光彩上絵具(特許6635610)

